「尾崎喜八資料」掲載誌
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星 座 晴れた夏の夜の南の空で、 下の方、波の飛沫のやうに廣漠とけぶつて光るのは 彼のつよい肩のうへに 風が來る、幅のひろい風が海の方角から。 月のない夜はいつ更けるとも分らぬ、 (「詩聖」大正十一年九月号) 尾崎喜八資料創刊号
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追分哀歌 火山砂に書いては消す者よ またあたらしく来る秋に (「四季」昭和十四年九月号) 尾崎喜八資料第2号
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彫 刻 鋳銅にちゞめた (「日本詩人」大正十三年八月号) 尾崎喜八資料第3号
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女のトルソ 女のトルソは台の上に 豊満な肉は 一ぽんのいのちあつて 張り切つて豊かな胸の平野にをどり あゝ、女のトルソ うねり脈うつ海洋の波 私はロダンのトルソの前にひざまづく (「生命の川」大正六年六月号) 尾崎喜八資料第4号
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大煙突 生活につかれたら来て見たまへ このごろ初夏の晴天なら まつさをにけぶる五月の雨の中 むくむくと盛り上る雲の群れを背景としては なさけなくなつたら来て見たまへ (「生命の川」大正六年6月号) 尾崎喜八資料第4号
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老の山旅 久しぶりにすつぽりと 「気をつけて!」とか「無理をしないで!」とか、 青い蛇紋岩の崩壊斜面や、 青春のさかんな体力が衰えると 久しぶりに今日私は山へ行く。 (帯広営林局・局報「樹氷」昭和三十一年3月号) 尾崎喜八資料第5号
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イメージ 平野を見おろす山の端はの (「文芸春秋」昭和三十三年九月号) 尾崎喜八資料第6号
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思うこと 敬虔と誇りとの額に朝々の太陽をおくりながら みどりの枝や、眞紅の花 (「帆船」大正十一年七月号) 尾崎喜八資料第7号
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一つの想像 着陸船イーグルの二人の乗員、地球人代表者のその一人、 星条旗、地震計、反射鏡その他の据え付け、 三十八万四千キロという暗黒の宇宙のかなたに せめて生ある物の証拠でもと探してみるが、 (日本ビクターEPレコード「人類ついに月に立つ〜アポロ11号からのメッセージ」
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彫 刻 ロワール河の金いろの胸と 七月が涼しい樹蔭をつくる小川の縁に座して しかも、春そのものが身を傾けてゐるやうな 水際に立つ菖蒲の骨組、五月の杏の花の肉 瞳は空と海、唇は石竹の花 生命なき大理石から叡智と愛と全能の手とによつて生れたおんみ (「日本詩人」大正十一年四月号) 尾崎喜八資料第14号
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