目 次
蛇 | 遠い分身 |
雪の雪月夜 | 山頂の心 |
岩雲雀 | 風 景 |
台風季の或る日から | 秋の林から |
山の蝶 | 山荘をとざす |
目 木 | 女と葡萄園 |
峠 | 桃林にて(Ⅰ) |
桃林にて(Ⅱ) | 桃林にて(Ⅲ) |
渓谷(Ⅰ) | 渓谷(Ⅱ) |
渓谷(Ⅲ) | 木曽の歌(奈良井) |
木曽の歌(鳥居峠) | 木曽の歌(開田高原) |
木曽の歌(寝覚) | 我等の民話 |
蛇 君たち、私に遭遇するや 水無月みなつきの水浸みずく草はらを行く私は |
遠い分身 海抜二千メートルの曠野の草から |
雪の星月夜 正月もまだ松の内という山の町の |
山頂の心 海抜三千百メートル、 |
岩雲雀 今日のながい前途のために |
風 景 太陽と紫外線と岩石と |
台風季の或る日から ピアノの鍵盤へかろく置かれた手のように |
秋の林から 秋の林には、時おり、ふと、 |
山荘の蝶 森の空間を流れるように落ちて来て、 |
山荘をとざす もういちど家の中を見てまわる。 |
目 木 「もう目木めぎの実が赤く熟うれ‥‥‥」と |
女と葡萄園 今われわれはおびただしい円熟と |
峠 下のほうで霧を吐いている暗い原始林に |
桃林にて(I) 農夫が彼の果樹園で |
桃林にて(II) 昔の川の流れが鷹揚に置いていった |
桃林にて(III) 桃林はついにみずから粧よそおった、 |
渓 谷(I) 高原と山々とのこの国に |
渓 谷(II) 朝まだき、荒い瀬音が谷を満たして |
渓 谷(III) 国文学の森山先生は釣の達人、 |
木曾の歌 (奈良井) 奈良井川のながれを見おろす道ばたで |
木曾の歌 (鳥居峠) われわれは木の根・岩角をつたいながら、 峠に近く幾百年を経た橡とちの やがて前方の視野がからりと開けて あたりは耳を聾するえぞ春蟬の合唱だった。 |
木曾の歌 (開田高原) もしも私たちがこの土地の生まれだったら、 地蔵峠のむこう、末川から西野まで 小さくて、粗食に堪えて、働き者の そして七月・九月の福島の馬市に、 |
木曾の歌 (寝覚) 方形の節理にそって割れた白い 角かどばった禿頭にふさふさ眉毛の老人が 床ばかりか世の中全体が味気なくなり、 以前には校長だったというこの老人に |
我等の民話 その人は空をきざむ氷雪の山々と、 古く強い魂と、日光のように寛容な心と、 幾年に一度の思いもかけぬ聖なる宵に ああ、その人が、このごろの秋の或る夜、 |